鬼滅の刃の炭治郎の柄の商標出願の概要

皆さんよく知っている鬼滅の刃の炭治郎が来ている着物の柄が商標登録出願されています。

 

出願人は集英社であり、出願日は2020年6月24日です。

 

指定商品は多岐に渡り、例えば「スマートフォン、スマートフォン用ケース、太陽電池、貴金属、キーホルダー、宝石箱、イヤリング、紙製ハンカチ、かばん類、被服、おもちゃ、釣具」等です。

 

指定商品に、布地は含まれていません。

 

 

鬼滅の刃の炭治郎の柄

特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)より
引用商願2020-078058

 

このような柄であったとしても、需要者が何人かの業務に係る商品であるかを認識させることができる自他商品識別力が有れば、商標登録されます。

 

一方で、自他商品識別力が無ければ商標登録されません。

 

商標の自他商品識別力については、こちらに詳細に記載しましたので、読んで頂ければ幸いです(ここをクリックすると新しいページが開きます)。

 

 

集英社は、鬼滅の刃のキャラクターが来ている着物の柄について商標登録出願をしている理由として以下のこと言っています。

 

集英社が炭治郎の着物の柄など6件を昨年6月に商標出願したのは、量販店などで鬼滅柄の商品が出回っているためだ。「悪質な便乗商品、違法なコピー商品を阻止し、正規品の流通を守る」と同社。

出願対象はスマートフォンのケースやTシャツなどさまざまだが、生地は含まれない。

 

 特許庁によると、「マークや色彩を見た一般の消費者がブランドと認識するもの」でなければ登録されない。例えば出願された市松模様は「色彩のみからなる商標」に準じた審査になるとみられるが、今月13日時点で、この商標に出願された546件のうち登録は8件のみで、対象商品も限定される狭き門だ。

 

上記引用は、下記URLより引用

https://www.sankei.com/article/20210114-JSJYFFNCRNMCJMEISJFDOYGCTM/2

 

集英社は、「鬼滅の刃」(登録6260437、登録6264744)、「炭治郎」(登録6397480)、「禰豆子」(登録6397481)等の商標を出願して、これらの商標は登録されています。

 

 

 

鬼滅の刃の炭治郎の柄の商標出願が拒絶

 

2021年5月26日に、識別力の無い商標である(商標法第3条第1項第6号)として、拒絶理由通知されました。

 

特許庁の拒絶理由通知の内容を以下に記載します。

 

この商標登録出願に係る商標(以下「本願商標」といいます。)は、黒色と緑 色の正方形を互い違いに並べ、連続反復的に配置した構成からなる、いわゆる「 市松模様」の一種と理解されるものですから、全体として、装飾的な地模様として認識されるにとどまり、かつ、その構成中に自他商品の識別力を有する部分を見出すこともできません。

 

 そうしますと、本願商標は、これに接する需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標というのが相当です。

 

特許庁は、参考情報として、「京屋染物店」のウェブサイトをあげ、以下のことを拒絶理由に書いています。
ここをクリックすると「京屋染物店」のページが開きます

 

「市松模様の意味 2018年2月23日」の見出しの下、「市松模様は碁盤目状の格子の目を色違いに並べた模様で、いわゆるチェック柄と同様の模様です。元々は石畳のような柄だったため、『石畳』と呼ばれていました。江戸時代中期に、『佐野川市松』という歌舞伎役者が舞台でこの模様の袴(はかま)を着ていたところ、当時の女性の間で大流行しました。それ以来、『市松模様』と呼ばれるのが一般的になっています。市松模様は、その柄が途切れることなく続いて行くこと から、繁栄の意味が込められています。市松模様はその『繁栄』の意味から、子孫繁栄や事業拡大など縁起の良い模様として沢山の人に好まれています。」との記載がある。

 

 

「京屋染物店」のウェブサイトに載っている市松模様の写真は、以下のとおりです。

 

 

市松模様の写真

上記「京屋染物店」のウェブサイトから引用

 

鬼滅の刃の炭治郎が来ている着物の柄と全然違うじゃないかという感じです。

 

ただ、商標登録出願は、意匠登録出願とは違い、公知意匠同一・類似であるということは拒絶理由では無く、特許庁の審査官が言いたいのは、市松模様というのは江戸時代中期からあり、地模様に過ぎず、識別力が無いということです。

 

確かに、商標審査基準識別力を有さない標章商標法第3条第1項第6号)の一例として、「地模様」が含まれています。

 

実はこの商標登録出願は、出願公開がされた後の2020年7月17日に、何者かによって、刊行物等提出書による情報提供がなされています。

 

この情報提供というのは、商標登録を阻むために、特許庁に対して、その商標登録出願拒絶理由を有する旨の書面を提出することです。

 

何者かが、鬼滅の刃の炭治郎が来ている着物の柄の商標の登録を阻みたかったようです。

 

「何者か」か分からないのは、情報提供は、匿名で行うことができ、今回も匿名で行われているからです。

 

代理人が意見書で反論するものの拒絶査定

 

特許庁からの拒絶理由通知に対して、代理人は2021年7月6日に意見書を提出して、反論しています。

 

以下に、意見書の内容を抜粋します。

 

鬼滅の刃の炭治郎が来ている着物の柄

商願2020-078058の意見書から引用

 

本願商標は,純粋な市松模様のみからなる商標ではなく,外縁に不規則な長方形を配した,いわば半端な部分をも含めており,かつ,これらを黒色の正方形の枠線で囲繞されている,という外観上の特徴を備えた正方形の図形商標なのであるから,全体としてみれば何ら自体商品識別力が否定されるものではありません。

 

代理人は、黄色枠の部分だけが商標を構成しているのでは無く、その外側の半端な部分も商標を構成しているので、「単なる地模様」では無く、「黒色と緑色の正方形を互い違いに並 べ、連続反復的に配置した構成からなる」ものでも無い。

 

本願商標は、「単なる地模様」では無いので、自他商品識別力を有している旨主張しています。

 

これに対して、特許庁は、2021年9月24日に、拒絶査定しました。

 

この拒絶査定に記載されている内容の一部を抜粋して以下に示します。

拒絶理由通知書の「参考情報」として示したように、「市松模様」は、伝統的な柄模様として親しまれ、被服などの装飾的な図柄として普通に使用されている実情があります。

 

そうすると、本願商標は、出願人が主張するような特徴が見られるとしても、全体として看者に与える印象から見ると、普通に使用されている装飾的な図柄を超えているということはできません。

 

してみれば、本願商標は、特徴的な形態を有しているということはできませんから、出願人の主張を採用することはできません。


特許庁の審査官は、鬼滅の刃の炭治郎が来ている着物の柄の商標は、外縁に不規則な長方形を配した,いわば半端な部分をも含んでいたとしてもなお、普通の使用されている装飾的な図柄を超えておらず、自他商品識別力を有していないと認定しています。

 

この拒絶査定に対しては、拒絶査定不服審判を請求することができます。

 

2021年10月6日現在では、拒絶査定不服審判の請求期間は経過していません。

 

拒絶査定不服審判の請求期間は拒絶査定の謄本の送達日から3ヶ月です。

 

出願人は、拒絶査定不服審判を請求するのでしょうか?

 

代理人は、意見書を提出する前の2021年6月22日に特許庁の審査官面接をしているので、出願人は商標権の取得に向けて相当に気合が入っていると言えます。

 

もし、拒絶査定不服審判を請求するとしたらどのような主張をするのでしょうか?

 

商標の使用により、日本全国レベルの周知性を獲得したので、自他商品識別力を有する(商標法第3条第2項)のような主張をするのでしょうか?

 

※商標法第3条第2項は、商標法第3条第1項第1~5号に該当する場合に主張でき、商標法第3条第1項第6号に該当する場合には、商標法第3条第2項の主張はできませんが、商標が全国レベルの周知性を有していれば、自他商品識別力を有しているので、商標法第3条第1項第6号に該当しないといえます。

 

 

もし、拒絶査定不服審判が請求されたのちに拒絶審決されたとしても、この拒絶審決に対して審決取消訴訟という行政訴訟知財高裁に提起することができます。

 

 

今後の流れがに興味が有ります。

 

竈門禰豆子の着物や我妻善逸の羽織も拒絶査定されています

竈門禰豆子の着物や我妻善逸の羽織も拒絶査定されています。

 

理由は、炭治郎が来ている着物の柄の商標と同様に、装飾的な地模様として認識されるにとどまり、かつ、その構成中に自他商品の識別力を有する部分を有さない(商標法第3条第1項第6号)です。

 

竈門禰豆子の着物の柄

特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)より引用商願2020-078059

我妻善逸の羽織の柄

特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)より引用商願2020-078060

 

 

冨岡義勇が着ている羽織の柄、胡蝶しのぶが着ている羽織の柄、煉獄杏寿郎が着ている羽織の柄は商標登録

 

以下に示す、冨岡義勇が着ている羽織の柄、胡蝶しのぶが着ている羽織の柄、煉獄杏寿郎が着ている羽織の柄は商標登録されました。

 

冨岡義勇が着ている羽織の柄

特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)より引用商標登録 第6397486号

胡蝶しのぶが着ている羽織の柄

特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)より引用商標登録 第6397487号

煉獄杏寿郎が着ている羽織の柄(商標登録 第6397488号)

特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)より引用商標登録 第6397488号

 

これらの商標は、装飾的な地模様では無く、自他商品識別力を有していると認定され、その他の拒絶理由が無く登録されています。

今後について

上の拒絶査定された商標が今後どうなるのか興味が有ります。

 

状況が変わりましたら、またアップします。

 

鬼滅の刃の炭治郎の柄は、現状では商標権は取得できていませんが、鬼滅の刃の炭治郎のキャラクターのコピー商品とかを売ると、不正競争防止法違反(混同惹起行為 不正競争防止法第2条第1項第1号)となる可能性が有ります。

 

2021年7月に、「鬼退治グッズ」などと称して「鬼滅の刃」便乗商品を販売していた4人が、不正競争防止法違反の疑いで逮捕されました。

 

7月28日に愛知県警が「鬼滅の刃」便乗商品を販売していた経営者ら4人を不正競争防止法違反(周知表示混同惹起行為)の容疑で逮捕。

 

被疑者らは、「鬼滅の刃」の商品に類似したデザインのマスクやサンダル等の複数商品を「鬼退治グッズ」などと称して販売。倉庫等の捜索で約3万7000点の商品等が押収されたといいます。これら便乗商品の販売で少なくとも17億円を売り上げていたと見られるとのこと。

上記記事は、下記URLより引用

https://news.yahoo.co.jp/articles/9d476351910e0a65eca2157c7e687a0e92d64d22

 

 

不正競争防止法違反(混同惹起行為 不正競争防止法第2条第1項第1号)については、こちらに詳細を記載しましたので、読んでいただけると幸いです(クリックすると新しいページが開きます)。

 

 

 

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