ユニクロがショルダーバッグを模倣したとしてSHEINを提訴

ユニクロが、ショルダーバッグを模倣したとしてSHEINを提訴しています。

日本経済新聞のよる記事によると

 

ファーストリテイリング傘下のユニクロは16日、「ラウンドミニショルダーバッグ」の模倣品の販売が不正競争防止法に違反するとして、販売停止と損害賠償を求めて、中国系のネット通販会社「SHEIN(シーイン)」の運営会社を提訴したと発表した。ユニクロが模倣品の販売で運営企業を提訴するのは、国内では初めて。事業への影響が大きいとして、訴訟に踏み切った。

2023年12月28日付で、東京地方裁判所に提訴した。ユニクロは「SHEINが販売する模倣商品の形態が当社商品の形態に酷似」しているとして「模倣商品の販売がユニクロブランドと商品の品質に対するお客様からの高い信頼を大きく損ねている」と説明している。模倣品の販売で被った損害賠償額として約1億6000万円と、遅延損害金の支払いを求めている。

 

上記記事は、下記URLより引用
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC168O50W4A110C2000000

 

ユニクロが販売するショルダーバッグ

ユニクロが販売するショルダーバッグは、このように、厚みをもった半円形状のものです。

 

ユニクロが販売するショルダーバッグ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上記画像は、下記URLのユニクロの販売ページから引用

https://www.uniqlo.com/jp/ja/products/E461053-000/00?colorDisplayCode=10

 

SNSでバズっているそうです。

ラウンドミニショルダーバッグは半円型の斜め掛けバッグ。使い勝手が良く価格も手頃だとして、2022年から昨年にかけてSNSで人気を呼び、売り切れ続出のブームを巻き起こした。

世界各地のメディアに取り上げられ、ファッション検索サイト、英Lyst(リスト)のランキングで昨年第1四半期の「最もホットなアイテム」に選ばれた

上記説明は、下記URLの記事より引用
https://www.cnn.co.jp/business/35213997.html

 

ユニクロのラウンドミニショルダーバッグは、ティックトッカーがどれだけ多くのアイテムを収納できるのかを披露するなどし、オンライン販売で大ヒットしている。

その収納力から、ディズニー映画「メリー・ポピンズ」(1964年)にちなんで「メリー・ポピンズのバッグ」と呼ぶ人もいる。この映画には、主人公のバッグから長い帽子かけなどを取り出すシーンがある。

ラウンドミニショルダーバッグに関連する動画には、この1年で何百万もの「いいね」が付いている。中には、ノートパソコンや水筒、キャンドル、さらにはロボット掃除機などをふざけて取り出す動画も投稿されている。

ナイロン製のこのバッグは、ユニクロ史上最も売れたバッグだと報じられている。日本では1500円、イギリスでは14.90ポンドで販売されている。

上記説明は、下記URLの記事より引用

https://www.bbc.com/japanese/68002892

 

ユニクロの製品が1500円である一方で、SHEINの製品は632円とユニクロの製品の半額以下です。

 

報道によると、SHEINの製品はユニクロ製品に酷似しているそうです。

 

以下街の声(下記URLの記事より引用)
https://news.yahoo.co.jp/articles/bb4ac30a5c72d2bb8092218dfbebe5e8ff7fbdb9

会社員(20代) 「似てるな、とは(思った)。持っていたら、どっちがどっちか、わからないかな」

会社員(20代) 「長く使う予定があったらユニクロを買うけど、特になかったらSHEINで買っちゃいますね」

会社員(40代) 「似てるけど…マネかって言われると、そこまででもないかな…(という)くらいのデザインかな」

 

SHEINとは

2008年に中国で設立されたSHEINは、オンラインショッピングの利用者の増加や、ソーシャルメディアに焦点を当てたマーケティング戦略により、新型コロナウイルスのパンデミックの最中に売上が急増した。

同社ウェブサイトによると、世界中に約約1万人の従業員を抱え、150カ国以上に商品を販売している。

現在はシンガポールを拠点とし、米ニューヨーク証券取引所への株式上場を検討しているとも言われている。

SHEINは論争の的にもなっている。商品が低価格で展開されていることから、同社の「環境フットプリント」や雇用慣行について疑問が浮上している。「環境フットプリント」とは、一般財団法人「日本品質保証機構」によると、「温室効果ガスによる気候変動への影響だけでなく、人体の健康、生活の質、生態系など複数の環境影響領域を評価し、一定の算定基準で数値化する」環境影響評価のこと。

こうした声に対し同社は、少量生産を行うことでより効率的に、無駄を減らしているとしている。また、強制労働については「ゼロ・トレランス(非容認)」ポリシーがあるとしている。

同社は「デザイナーやアーティスト、そしてそのほかの人の知的財産権を尊重する」としている。しかし、オンライン上では、自分たちの商品をSHEINに模倣されたとして、中小企業の経営者たちから非難の声が上がっている。

上記記載は、下記URLの記事より引用

https://www.bbc.com/japanese/68002892

また、SHEINは、AI技術を駆使しているので、トレンドを反映した商品を数日で市場に送り込める一方で、パクリ製品が多いそうです。

「商品開発にはAI技術を駆使。今、注目されているトレンドをデータ分析し、そのデザインを取り入れたアイテムを爆速で発売。デザイン費用を圧縮することで、圧倒的な安さを実現する仕組みを構築しているのです。

トレンドを反映した商品を数日で市場に送り込むというスピード感は、業界内でもはや“ファストファッション”を超え、“リアルタイムファッション”と評されるほどです」(前同)

ただし、問題点が指摘されることも珍しくはないという。

「AI技術を駆使したデザイン開発の結果、サイト上では露骨な“パクリ商品”が多数、販売されていることでも知られています。結局、素早く安い価格で商品を作ろうと思うと、新しいデザインをおこすなど独自のトレンドを生み出す時間はない。トレンドを模倣・複製することで、商品を安く大量に市場へ投下できるというわけです」(同)

上記記載は、下記URLの記事より引用
https://pinzuba.news/articles/-/5390?page=1

ユニクロの提訴について弁理士による解説

 

ユニクロは、SHEINによるラウンドミニショルダーバッグの販売行為が、不正競争防止法に違反するとして提訴しています。

 

弁理士的には、意匠法違反で無く、不正競争防止法違反で提訴したということに驚いています。

ユニクロは、ラウンドミニショルダーバッグについて意匠権を保有していません。つまり、ユニクロは、意匠法違反で提訴したくてもできなかったということになります。

 

ひょっとすると、意匠出願中であり、意匠権が設定登録されていないだけかもしれませんが、ユニクロ、つまり、株式会社ファーストリテイリング意匠権の保有数を調べましたが、たった21件だけなので、意匠出願をしていない可能性が高いです。

ユニクロのような世界的な大企業が、意匠権の保有数がたった21件であるということに驚きを禁じえません。

 

不正競争防止法違反ということですが、これは形態模倣行為(不正競争防止法2条1項3号)を指します。

 

不正競争防止法違反の形態模倣行為で、模倣者の行為を差し止めるためには、①模倣品が模倣された商品と実質同一であること②最初に販売した日から3年以内であることが要件となります。

 

不正競争防止法違反の形態模倣行為につきましては、こちらに詳細を記載(ここをクリックするとあたら良いウインドウが開きます)しましたので、ご覧になって頂ければ幸いです。

 

①模倣品が模倣された商品と実質同一であることについて

 

報道によれば、SHEINの製品はユニクロ製品に酷似していることですが、不正競争防止法違反の形態模倣行為①模倣品が模倣された商品と実質同一であることは、かなり厳格に判断されます。

 

丸パクリであれば、実施同一であると言えますが、ちょっとでも違えば、実施同一で無いと判断される可能性も有ります。

 

ドラゴンソード・キーホルダー事件(’東京地裁判決平成8年12月25日)では、実施同一について以下のように、判断されています。

改変の着想の難易、改変の内容・程度、改変による形態的効果等を総合的に判断して、当該改変によって相応の形態上の特徴がもたらされ、既に存在する他人の商品の形態と酷似しているものと評価できないような場合には、実質的に同一の形態とはいえないものというべきである。

 

このように、形態模倣行為実質的同一は、意匠権侵害における類似よりも狭いと解されます。

 

ユニクロが、ラウンドミニショルダーバッグについて意匠権を保有していれば、SHEINによるラウンドミニショルダーバッグの販売行為は、意匠権の侵害になるのは確実です。

 

意匠権の場合には、その意匠と同一だけでなく、類似の範囲まで効力が及ぶからです。

 

訴訟において、被告であるSHEINは、ユニクロが販売するラウンドミニショルダーバッグと異なる部分が有る旨主張して反論し、その主張が認められて、不正競争防止法形態模倣行為(不正競争防止法2条1項3号)で無いと判決される可能性は有ります。

 

このことを考えても、ユニクロは、ラウンドミニショルダーバッグについて、意匠出願をして、意匠権を取得しておくべきだったと考えます。

 

 

<<追記>>

ユニクロのバッグとSHEINのバッグの形状が実質同一か否かについて、情報が入ってきましたので以下に紹介します。

以下の紹介記事は、下記URLより引用

https://news.yahoo.co.jp/articles/457d00978c56ecd5efcd9dac4c918ee6450852bc

「まず形がほぼ同じ。この『はみ出し』という作り方だが、これは別にあってもなくてもどっちでも大丈夫だが、ユニクロの方にも入っていて、SHEINの方も入れられている」

 

「ショルダーベルトのつけ方にもいろんな方法があるが、ここから1本出ていて、角カンというが、ここを通しているつくりとか、職人から見てもユニクロを見て作っているという印象を受ける」(どちらも「仙入」の仙入雅之取締役)

 

さらに別のSHEINのバッグでは「このユニクロのポケットも作りが全く一緒。ポケット1個に対してステッチがあって、2つスペースがある。(SHEINも)同じくポケットに対してステッチが入って、2つスペースがある。全く同じ作りになっている」(仙入取締役)

 

確認するためにパーツごとに分解してみると「バッグの状態よりもどれだけ一緒なのかわかりやすい。見てもらったらわかると思うが、カーブの形がほぼ同じ。バッグでここまで同じなのはなかなかない。ユニクロのバッグを購入して解体して、その形をとって、型紙に落として作っている可能性もあると思うほど酷似している」(仙入雅之取締役)。

 

上記の記事の記載によれば、訴訟において、ユニクロのバッグとSHEINのバッグの形状が実質同一と認定されるかもしれません。

 

SHEINのバッグはユニクロのバッグをそっくりそのまま真似て作ったようですが、少しでも形状を変えられてしまえば、実質同一で無くなってしまいます。

 

②最初に販売した日から3年以内であることについて

不正競争防止法形態模倣行為(不正競争防止法2条1項3号)は、日本国内において最初に販売した日から3年しか主張できません。

 

一方で、意匠権による保護期間は、意匠出願の日から25年です。

特許権の保護期間である特許出願の日から20年よりも長く、非常に長い保護期間です。

 

ユニクロは、ラウンドミニショルダーバッグについて意匠権を保有していないので、ユニクロがラウンドミニショルダーバッグを日本国内において最初に販売した日から3年経過すると、ユニクロが販売するラウンドミニショルダーバッグと全く同じ製品について、知的財産権上全く問題無く製造・販売することができてしまいます。

 

このことを考えても、ユニクロは、ラウンドミニショルダーバッグについて、意匠出願をして、意匠権を取得しておくべきだったと考えます。

 

私は、意匠権を侵害しない旨の見解書を作成することは有りますが、その対象意匠は明らかに海外のブランド品の丸パクリである場合が有ります。

しかし、その海外のブランドは意匠出願をしていなかったために、意匠権を保有しておらず、また、最初に日本国内において販売した日から3年を経過していることから、不正競争防止法の形態模倣行為でも無いことから、合法的にパクリ商品を販売することができてしまいます。

 

ユニクロによる訴訟の行方を興味深く見守りたいと思います。

 

意匠出願をしましょう

 

上で述べましたが、物品の形状を保護するためには、不正競争防止法違反では対処できない場合が有ります。

 

物品の形状を保護するためには、意匠出願をすることを強くお勧めします。

 

 

意匠については、ここに詳細に記載しました(ここをクリックすると新しいウインドウが開きます)。

部分意匠については、ここに詳細に記載しました(ここをクリックすると新しいウインドウが開きます)。

 

 

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