不正使用取消審判の概要
不正使用取消審判とは、商標権者又は使用権者の不正使用を理由として、当該商標登録を取り消すことについて請求する審判のことです(商標法第51条、第52条2、第53条)。
不正使用取消審判の条文
第51条 商標権者が故意に指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用であつて商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。
2 商標権者であつた者は、前項の規定により商標登録を取り消すべき旨の審決が確定した日から五年を経過した後でなければ、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について、その登録商標又はこれに類似する商標についての商標登録を受けることができない。
第52条 前条第一項の審判は、商標権者の同項に規定する商標の使用の事実がなくなつた日から五年を経過した後は、請求することができない。
第52条の2 商標権が移転された結果、同一の商品若しくは役務について使用をする類似の登録商標又は類似の商品若しくは役務について使用をする同一若しくは類似の登録商標に係る商標権が異なつた商標権者に属することとなつた場合において、その一の登録商標に係る商標権者が不正競争の目的で指定商品又は指定役務についての登録商標の使用であつて他の登録商標に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。
2 第五十一条第二項及び前条の規定は、前項の審判に準用する。
第53条 専用使用権者又は通常使用権者が指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についての登録商標又はこれに類似する商標の使用であつて商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。ただし、当該商標権者がその事実を知らなかつた場合において、相当の注意をしていたときは、この限りでない。
2 当該商標権者であつた者又は専用使用権者若しくは通常使用権者であつた者であつて前項に規定する使用をしたものは、同項の規定により商標登録を取り消すべき旨の審決が確定した日から五年を経過した後でなければ、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について、その登録商標又はこれに類似する商標についての商標登録を受けることができない。
3 第五十二条の規定は、第一項の審判に準用する。
第54条 商標登録を取り消すべき旨の審決が確定したときは、商標権は、その後消滅する。
取消の要件
法51条の審判
商標権者が、禁止権の範囲で使用した場合に、①品質誤認又は②他人の業務に係る商品若しくは役務と混同が生じることが要件です。
ここでいう禁止権の範囲で使用とは、上右の表のオレンジ色の範囲での使用であり、以下の①~③のいずれかでの使用をいいます。
①登録商標と類似の商標を、指定商品・指定役務と同一の商品・役務に使用
②登録商標と同一の商標を、指定商品・指定役務と類似の商品・役務に使用
③登録商標と類似の商標を、指定商品・指定役務と類似の商品・役務に使用
専用権の範囲での使用、つまり、登録商標と同一の商標を、指定商品・指定役務と同一の商品・役務に使用(上右の表の赤色の範囲での使用)は、取消の対象とはなりません。
なお、いわゆる色違い類似商標の使用は、取引の実情を考慮し、専用権の範囲の使用とされるので、本審判の対象外となります(商標法第70条第3項、第1項)。
故意に、①品質誤認又は②他人の業務に係る商品若しくは役務と混同させたことが要件とされています。
過失により、商標権を取り消すのは酷だからです。
法52条の2の審判
商標権が移転された結果、抵触する商標権が異なった商標権者に属することとなった場合に、商標の専用権の範囲の不正競争の目的の使用により、他の登録商標に係る商標権者、使用権者等の商品又は役務と混同が生じることが要件です。
商標権者の禁止権の範囲での不正使用については、本条では無く、法51条が適用されます。
法53条の審判
通常実施権者や専用実施権者による、専用権の範囲又は禁止権の範囲での使用により、①品質誤認又は②他人の業務に係る商品若しくは役務と混同が生じることが要件です。
禁止権の範囲のみならず、専用権の範囲の使用も対象となります。
専用権の範囲での使用であっても取消の対象となるのは、専用権の範囲で使用権者が商標権者の商品等よりも品質劣悪なものを供給する場合や他人の商標(登録商標でなくても)が著名で混同を生ずるおそれが生じた結果、使用権者が需要者の利益を害するような不正使用をする場合もあるからです。
通常実施権者や専用実施権者による故意は要件でなく、過失でも取消の対象となります。
商標権者が相当の注意をしてもその事実を知らなかった場合には、適用されません(商標法第53条第1項但し書き)。
請求の要件
請求主体
いずれの不正使用取消審判でも、何人も請求できます。
需要者保護という公益的色彩が強い審判だからです。
時期的要件
いずれの不正使用取消審判でも、不正使用の事実がなくなった日から5年以内に請求することができます。
審決確定の効果
いずれの不正使用取消審判でも、審決が確定すると、商標登録が取り消され、商標権は、その後将来に向かって消滅します(商標法第54条)。
※遡及消滅では無いです。
いずれの不正使用取消審判でも、5年間の再登録が禁止されます。
取り消された商標権の類似の商標や、指定商品・指定役務と類似の指定商品・指定役務も再登録が禁止されます。
請求棄却審決の場合には、いずれの不正使用取消審判でも、商標登録が維持され、一事不再理の適用があります。
審決に不服がある場合には、審決確定前は審決等取消訴訟による不服申し立てが可能です。
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