部分意匠とは
部分意匠とは、物品の一部分の形態について意匠登録を受けようとするものです。
独創的で特徴ある部分を取り入れながら、製品全体のデザインでは意匠権侵害を避けるような巧妙な模倣から、製品を守ることができます。
下の意匠は、いずれもiPhoneの意匠ですが、右が部分意匠で、左が全体意匠です。
部分意匠は、部分意匠として権利を取得する部分を実線で表し、その他の部分を破線等で表します。
全体意匠では意匠全体で類比判断されるのに対して、部分意匠では基本的に類否判断をされる対象は実線部分で、破線部分は部分意匠の位置・範囲・大きさを表すものにしか過ぎません。
従いまして、部分意匠の場合には、破線の部分が対象製品と異なっていたとしても、実線部分が対象製品と同一又は類似であれば、基本的に意匠権の権利範囲に含まれので、部分意匠の方が全体意匠よりも強い権利であるといえます。
つまり、部分意匠の制度を利用して意匠登録を受けると、製品のデザインのうち、部分意匠とした以外のデザインはどのような形状であろうが関係なくなるため、実質的に意匠権の権利範囲が広くなります。
部分意匠として出願するには
①一定の範囲を占める部分であること
「意匠登録を受けようとする部分」は、部分意匠に係る物品全体の形態の中で一定の範囲を占める部分、即ち、当該意匠の外観の中に含まれる一つの閉じられた領域でなければなりません。
以下のように、「意匠登録を受けようとする部分」が稜線のみである場合には、稜線は面積を持たないため、一定の範囲を占める部分に該当ぜず、物品とは認められず、工業上利用することができる意匠に該当しないとして拒絶されます(意匠法第3条第1項柱書)。
工業上利用することができる意匠についての詳細はここをクリック(新しいページが開きます)。
また、意匠に係る物品全体の形状等のシルエットのみを表したもの 当該意匠の外観の形状等の中に含まれる一つの閉じられた領域とは認められないため、他の 意匠との対比の対象となり得る一定の範囲を占める部分に該当しないません。
【事例】乗用自動車の側面を投影したシルエットのみを表したもの(意匠審査基準)
②対比の対象となり得る部分であること
「意匠登録を受けようとする部分」が、当該物品全体の中で一定の範囲を占める部分であっても、他の意匠と対比する際に、対比の対象となり得る意匠の創作の単位が表されていなければなりません。
以下の事例は、いずれも「意匠登録を受けようとする部分」が、包装容器という物品全体の形態の中で一定の範囲を占める部分であって、他の意匠と対比する際に対比の対象となり得る意匠の創作の単位が表されているといえます。
一方で、以下の事例は、「意匠登録を受けようとする部分」が、包装容器という物品の形態の中で一定の範囲を占める部分であっても、他の意匠と対比する際に対比の対象となり得る意匠の創作の単位が表されていないとして、物品とは認められず、工業上利用することができる意匠に該当しないとして拒絶されます(意匠法第3条第1項柱書)。
部分意匠の類否判断
審査段階
部分意匠と公知意匠とが以下のすべてに該当する場合、部分意匠は公知意匠に類似します。
① 両意匠の意匠に係る物品等の用途及び機能が、同一又は類似であること
② 全体意匠の用途及び機能と「物品等の部分について意匠登録を受けようとする意匠」の「意匠登録を受けようとする部分」の用途及び機能が、同一又は類似であること
③ 全体意匠の物品等の全体に対し、「物品等の部分について意匠登録を受けようとする意匠」の「意匠登録を受けようとする部分」の当該物品等の全体の形状等の中での位置、大きさ、範囲が当該意匠の属する分野においてありふれた範囲内のものであること
④ 全体意匠の形状等と「物品等の部分について意匠登録を受けようとする意匠」の「意匠登録を受けようとする部分」の形状等が、同一又は類似であること
実務上の部分意匠出願
私の事務所では、意匠登録出願は、部分意匠での出願が多いです。
なぜかというと、少しでも強い権利にしようと考えているからです。
独創的で特徴ある部分で意匠権を取得しようというよりも、意匠の構成要素としたく無い部分を破線で表すことによって、破線部分のデザインはどうでもよくなります。
全体意匠で意匠権を取得した場合に、意匠権が発生している意匠と侵害意匠とボタンや穴の形状・位置・数が異なれば、非類似の意匠とされる可能性が有ります。
ボタンや穴を破線で表した、部分意匠として意匠権を取得すれば、ボタンや穴の形状・位置・数が異なったとしても、この違いによって非類似とされることは無くなります。
但し、破線で表す部分が多くなればなるほど、意匠を構成する部分は減少するので、意匠の新規性・創作非容易性を満たすのは厳しくなると考えています。
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